脳梗塞・脳出血での障害年金請求について
障害年金を請求する際は通常、初診日から1年6ヶ月経過した日が障害認定日となり、その日から申請が可能となります。
しかし、特例として初診日から1年6ヶ月経っていない場合でも請求できる傷病がいくつかあり、脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患も特例として認められる場合があります。
今回は脳血管疾患で障害年金申請する際の注意点や認定基準についてみていきましょう。
◎初診時の年齢について
脳血管疾患は高齢期に発症するケースが多いですが、65歳を超えている方(会社勤めをされていない方)が65歳を過ぎて初めて脳血管疾患を発症して障害が残った場合には障害年金の請求は出来ません。
一方、65歳を過ぎて脳血管疾患を発症した場合でも、初診日(発症日)にその方が会社勤めをされていて厚生年金の被保険者であれば、障害厚生年金の請求は可能となります。
ただしこの場合には仮に2級以上に該当しても、障害基礎年金を併せて受給することは出来ませんので、受給額は低額となります。
このため、(既に受給中の)老齢年金と比較をして、障害厚生年金を請求するメリットがあるのかどうかを検討する必要があります。
◎障害認定日について
脳梗塞や脳出血は原則、他の疾患と同様に障害認定日は1年6ヶ月経過後です。
しかし例外として、脳血管障害により機能障害を残しているときに、初診日から6ヶ月経過して以降に医学的観点からそれ以上の機能回復がほとんど望めないと認められたとき(症状固定)を障害認定日として取り扱うとされています。
脳梗塞や脳出血を発症した方は、まず手術や治療を行い、その後リハビリテーションを受けるという流れが一般的かと思われます。
リハビリテーションを受け、今後これ以上の回復が見込めないであろうと医師が判断したとき、その時点で症状固定となります。
つまり、医師の診断によっては初診日から1年6ヶ月経過する前に障害年金の申請が可能になるということです。
◎認定基準
脳血管疾患によって麻痺などの障害が残った場合の認定基準は以下の通りです。
○肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害の認定
令別表 |
障害の程度 |
障害の状態 |
国年令別表 |
1級 |
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 |
身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が各前号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
|
厚年令別表第1 |
3級 |
身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
肢体の障害が上肢及び下肢などの広範囲にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィー等)の場合には、「上肢の障害」、「下肢の障害」及び「体幹・脊柱の機能」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず、「肢体の障害」として認定されます。
○各等級に相当すると認められるものを一部例示すると次の通りとなる。
障害の程度 |
障害の状態 |
1級 |
・一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの ・四肢の機能に相当程度の障害を残すもの |
2級 |
・一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの ・四肢に機能障害を残すもの |
3級 |
・上肢及び下肢に機能障害を残すもの |
肢体の機能の障害が上肢及び下肢の広範囲にわたる場合で、上肢と下肢の障害の状態が
相違する場合には、障害の重い肢で障害の程度を判断し、認定されます。
○日常生活における動作と機能との関連は、厳密に区分することができませんが、概ね次の通りとされています。
ア 手指の機能
(ア)つまむ(新聞紙が引き抜けない程度)
(イ)握る(丸めた週刊誌が引き抜けない程度)
(ウ)タオルを絞る(水をきれる程度)
(エ)ひもを結ぶ
イ 上肢の機能
(ア)さじで食事をする
(イ)顔を洗う(顔に手のひらをつける)
(ウ)用便の処理をする(ズボンのところに手をやる)
(エ)用便の処理をする(尻のところに手をやる)
(オ)上衣の着脱(かぶりシャツを着て脱ぐ)
(カ)上衣の着脱(ワイシャツを着てボタンをとめる)
ウ 下肢の機能
(ア)片足で立つ
(イ)歩く(屋内)
(ウ)歩く(屋外)
(エ)立ち上がる
(オ)階段を上る
(カ)階段を下りる
なお、手指の機能と上肢の機能とは、切り離して評価することなく、手指の機能は、上肢の機能の一部として取り扱います。
〇身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係を参考として示すと、
次の通りです。
ア 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作の全てが「一人で全くできない場
合」又はこれに近い状態をいう。
イ 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で
全くできない場合」又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に
不自由な場合」をいう。
ウ 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない
場合」又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」をいう。
◎診断書について
脳血管疾患での後遺症は、身体麻痺、精神障害、言語障害、嚥下障害、記憶障害、眼の
障害など、多岐にわたります。
障害年金申請時、主治医の診断書提出が必須となりますが、どのような後遺症かによって作成する診断書の種類も異なります。「肢体」、「精神」、「聴覚、鼻腔、平衡機能そしゃく、嚥下機能、言語機能」、「眼」等の様式に分かれていますので、どの診断書を使うのが
適切か検討してから申請しましょう。
また、後遺症が複数ある場合には、それぞれの診断書を提出する必要があります。
障害年金について、ご自身が受給の可能性があるか、症状に合った診断書が何かわからないなど、どんなことでも構いませんので、お困りの際はお気軽にご相談ください。